超音波の話

音声周波数より高い音を超音波と言う。音声周波数は20,000Hzつまり1秒間に20,000回の振動位までだから、これ以上振動数が多い音を超音波と言う。超音波断層装置で使われている超音波は3MHzから7MHz, M(メガ)106乗だから、1秒間に300万回から700万回の振動をする音を使っていることになる。超音波にはパルス波と呼ばれる波と連続波と呼ばれる波がある、超音波断層装置に使われているのはパルス波である。ピンと一度超音波を発射しそれが何かに当たり反射して来るまでの時間を計測する。生体内の音の速度は水中とほぼ同じ約1,500mだから帰って来るまでの時間を測ることにより反射面までの距離を測ることができる。距離が測られた後に次のパルスが発射される。これだけでは画像にはならないが、超音波断層装置は小さい振動装置が並んでセットされている。この振動装置を順番に駆動することによって、何番目の振動装置の横向けの距離に応じた反射面までの距離を測定することができる。振動装置の切り替えは1秒に数百回位繰り返されるので、振動面が動いていれば装置には動画として記録される。一方連続波は連続して振動している音である。胎児の心拍数を数える超音波ドプラ胎児心拍計などに用いられている。これはオーストリア ザルツブルグの物理学者クリスチャン ドプラにより発見された原理を利用しているのでドプラ法と呼ばれる。ザルツブルグはモーツアルトで有名だが、ドプラも有名で土産物店ではモーツアルチョコレートとドプラチョコレートが並んで置かれている。ドプラの原理とは、音源が聴いている人に近づいて来る場合は、周波数は高くなり遠ざかる場合は低くなる。動いているものに当たり反射して来る場合も同様で物体が近づいて来る場合は周波数が高くなり、離れていく場合は周波数が低くなる。つまり周波数を測れば物体の運動速度がわかる。この原理を臨床応用した先生たちは大阪大学の先輩で工学部の里村先生、医学部の二村先生、金子先生などがいる。仁村先生は心臓の動きを計測し、金子先生は頸動脈の血流速度を測った。そのような環境で医者になった私は若い時から超音波に親しむことになった。ちなみに私が測ったのは胎児の血流であった。二村先生は私が国立循環器病センターに赴任した時の研究所長、金子先生はオーストリアにある クリスチャン ドプラ財団の名誉総裁となった。